シリンホト大草原日記
シリンホト2日目。
旅の友に持ってきた本は、
なのだが、ほとんど、手がつかない。
このうち、モンゴルに関係するのは、カルヴィーノ『見えない都市』だが、考えてみれば、この小説は、フビライ汗のもとでマルコ・ポーロが語る物語についての本であり、モンゴルのことは全く出てこないのであった。
ところで、このブログはもちろん海外出張の暇を見つけて書いているものだが、仕事の話はほとんどしない。
「他の大使らは饑饉や汚職や陰謀を告げ、あるいは碧玉の新たな鉱脈の発見、貂皮の割より値段、彎月刀供与の申し出を知らせてまいっておるぞ。で、その方は?」と偉大なる汗はマルコ・ポーロに問うた。「そちもまた同様にはるばると遠い国から戻って来ながら、申してくれることはただ、門先にすわりこんで夕涼みするものが思い浮かべるようなものばかりか?それならば、そのように旅をして何の役に立とうというのか?」
もちろん、出張報告はこのブログとは別のしかるべき方法によって書かれ、提出されることになるのだが、それはあくまで「出張」であって、旅とはどこか違うような気がする。
旅の合間に出張しているというべきか、出張の合間に旅をしているというべきか。
自問自答するだだっ広いホテルの窓外には、日が暮れるなか、昨日の機内で見下ろしたモンゴルの荒野が広がっているが、昼間に用務先の案内で大草原を見ることになった。
こんな荒野にも、人間の手は伸びているわけで、どこまでも続く大平原にどこまでも電線は続くし、悪趣味なモニュメントも建立されている。
垂直の視点でなにやら荒涼とした荒野のイメージを抱いていたが、同じ対象を真横に見ると、そんな感傷的なイメージは完膚なきまでに裏切られた。
それにしても、胃がぼろぼろである。
おそらくこの原因は、肉ではなく、牛乳のお茶やヤギのヨーグルトなどを大量に摂取したためだと思われる。