袋小路の男

はい、私です。

それにしてもPTAのゼア・ウィル・ビー・ブラッドは効いた。
翌日から激しいうつ状態に陥ってしまった。
なぜか知らず、絲山秋子袋小路の男を読んで、涙が一粒。
目を滲ませる暇もなく、子ども会の役員会で、広報文化部副部長に任命され、年に2回の新聞発行の大役を授かったのだった。
とかなんとかしていると、おふくろが転んで足首を捻挫。足の甲あたりにヒビが入っているというが、物ともせず、ぴょこぴょこと歩き回って家事に精を出している姿に呆れるやら感嘆するやら。
ソフトの練習に巻き込まれ、全身筋肉痛のところに、3年生のヘナチョコライナーが見事左膝のお皿の下に直撃。ううう、うずくまる間もなく今度は右足大腿部に2発目を喰らい、KO。
どっちがシゴかれているのか。。。

袋小路の男


本日は久しぶりの休日。
ソフトの部員が朝から遊びに来たので、昼前に温水プールに連れて行くが、日頃の特訓でかなりクタビレテイル諸君は、早々に上がってくたーっとなっている。
しようがないので、最寄りの「スバル書房」なる古本屋で、少し時間をつぶすことにする。
サンリオ文庫のE.L.ドクトロウの「ダニエル書」を105円で拾う。
運動公園のアスレチック広場で、5月の風を堪能する。

さて、このアスレチック広場は、中央に川が流れていて、実は橋で繋がっているのだが、その橋を渡ってすぐのところに小さなひあがった池があって、池の真ん中の道がこんもりした植木の小山のなかへ伸びている。昔は、その小山は池から伸びる小道に沿って分断されていたのだが、いまは、手入れが行き届いていないのか、わざとそうしているのか、トンネル状になっている。その小山の中は植木が生い茂っていて、子供の頃はよく探検して遊んだものだ。たまにエロ本が落ちていたりしたのだが、いまどきの近所の小学生たちも同じように、遊んでいるのだろうか。
この運動公園は、最近まで住んでいた生家の国道を挟んで直ぐ目の前にあったので、すみずみまで良く知っていた。もうひとつ大きな池があって、そっちではよく鯉のエサを持っていって、よく掌をぱちぱち叩いて、鯉たちを呼んでいたものだった。あれは小学5年生くらいの頃か、それとももう中学生になっていただろうか、散歩していると、池の近くの、これもまた植木が生い茂って小山になっていたのだが、そのなかから、女性の悲鳴が聞こえたこともあった。恐ろしいと言うよりも、えええ、これってもしかしてと、もわーっと想像をたくましゅうしたものだった。大きな池の近くには、「アベック広場」と呼ばれていた、公園を一望できる小高い丘があって、ここは今でも、盛りの付いた中高生カップルの名物スポットなのだが、若々しいカップルがハグハグしたり、スカートの中に手を突っ込んだりしている付近で、そうあのオレンジ色やクリーム色のベンチで、藤棚の下で、中学3年生の夏休みは、プールの帰りに決まってタバコを吸っていたのだ。あーナツカシや。青い春のヒビだったことよ。
それにしても、アスレチック広場の植木の生い茂った小山を、初夏の爽やかな風に吹かれながら見ていると、小学生くらいの男の子が二人、今日も茂みの中で探検ごっこをしていて、茂みの中から小道の方を見ると、女性の白い足が地面に横たわっているのが見え、茂みの中をもう少し進んでいくと、長靴を履いた髭面の男が泥だらけになりながら、池の中をスコップで掘っているのだった。小学生くらいの男の子たちはじっとしたまま、男が横たわった女性の脇を抱えて、池の中に沈める一部始終を、動けないというよりも、興味津々とした感じで見ている。黒く長い髪は濡れて顔中を覆っていて、赤い植物のプリントしてあるワンピースから出ている手も足も妙に白くて、脇を抱えられたまま、池の中へ引きづられていき、男のふところで沈んでいく黒い髪が墨を溶いたように広がって、一瞬、かたちのよい鼻と閉じられた瞼が白く覗いて、再び黒い髪に覆われながら消えていく。






そういえば、昨日の夜、蛍を発見。
さっき、次男の手に一匹止まって、光っていた。
楽園である。
現在はカナブンが網戸に何度もぶつかっている。