クリストファー・プリースト著/古沢嘉通訳「ISBN:4150203784:title」(ハヤカワ文庫)
「モーヴァン」のサウンド・トラックを聴きながら読了。読んでいる途中、リヴェットの「Mの物語」を観ていて黒沢清の「アカルイミライ」で浅野忠信が幽霊となってオダギリジョーと藤竜也を見守っているシーンを思い返したのと同じように、同じく黒沢清の「大いなる幻影 [DVD]」で武田真治が消えていくシーンを思い返していた。
たしかに面白く、さくさくと読みやすくもあるのだが、この「作者」には、はっきり言って賛同できない。おいどんは読み誤っているのだろうか?しかし、この小説には、「作者」というものの「暴力」がはっきり示されているのではないか?
ともあれ、法月綸太郎の解説に出てくるベンヤミンのボードレール論でも読んでみるか。
と、岩波文庫をぱらぱら眺めている途中で、ちくま文庫の「ボードレール全詩集〈1〉悪の華、漂着物、新・悪の華 (ちくま文庫)」をためしに開いてみると、ありゃま。プリーストはあきらかにボードレールにインスパイアされたのではないだろうか。
幽霊 Revenant
鹿毛色の目をした天使たちのように、
私はきみの閨に帰ってくるだろう、
そして、夜の影たちとともに、音もなく、
きみの方へとすべりこむだろう。
そして、いろ浅黒いわが恋人よ、
月のようにつめたい接吻と、
墓穴のまわりに這いまわる
蛇の愛撫を、私はきみに与えよう。
鉛色の朝が来るだろう時、
私のいた場所が空なのをきみは知り、
そこは夕方まで冷やりとしているだろう。
他の男たちが、優しい情愛で
きみの生命ときみの若さを支配するなら、
この私は、恐怖をもって支配したい。